医療法人や診療所開設に関するQ&Aなど
医療法人の役員になれない人は?
1.成年被後見人又は被保佐人
2.医療法、医師法、歯科医師法その他医事に関する法令の規定により罰金以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日から起算して2年を経過しない者
3.前号に該当する者を除くほか、禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなるまでの者
さらに監事につきましては、役員の親族を就任させることができません。また、顧問弁護士、顧問公認会計士、顧問税理なども役員と利害関係があるため就任できません。
MS法人の役員との兼務については、その取引の実情によっては医療法人の役員になれない場合があります。
未成年は医療法人の役員になれますか
民法上の意思能力(15歳程度以上)が必要と解されています。
医療法人の名称は?
都道府県の指導により、「医療法人」という名称を付けた上で、診療所を1箇所開設する医療法人は「医療法人○○医院」「医療法人○○クリニック」(○部分は医師の氏)の名称を用いることが多くなっております。
都道府県にもよりますが、かなり強い指導を受けるため、実質、これとは別の名称にできない地域もございます。(現在はかなり緩和傾向にあります)
2箇所以上の診療所を開設する医療法人は、「医療法人○○会」「医療法人社団○○会」、「会」を付けるよう指導を受ける地域がございます。
全国の医療法人の名称を見ていますと、必ずしも「会」を付ける必要がないようですが、当事務所の過去の事例では「会」を付けるよう指導を受けました。
医療法人の事業年度は?
4月1日から3月31日の年1回が一般的ですが、法律上は任意に定めることが可能です。
これとは違う設定をする場合は、理由を求められることがございます。
顧問税理士さんの意向で決める場合が多いです。
いきなり医療法人を設立して開業できますか?
まず、法律上は個人開設などの実績は必要ありません。
都道府県によっては1年又は2年の実績がないと出来ないと指導しているところがございます。これはあくまで「行政指導」になりますので、設立することは可能です。
しかし、実績がないと認めないと行政指導を超えた違法な制限をする自治体がございます。
【某自治体のQA】
診療所の開設と同時に医療法人化することは可能ですか?
【回答】
医療法人の設立を認可するにあたって、医療機関の開業実績は問いません。しかし、法人化した後、医療機関の経営が長期安定的であるかを証明する必要があります。
個人開設の実績がない場合は、推定診療圏と想定される範囲において標榜を予定する診療科目の一日あたりの受診人数等について市場調査を行い、設立後2年間の事業計画や予算書の裏付けとなる資料やデータを提出してください。
医療法人設立時の診療所開設実績について
医師以外の者が理事長になれますか?
許可を受けることで可能にはなりますが、基本的に認められることはありません。
例外として、認められやすい事例としては、理事長が急に業務ができない状態になったとき(急死や急病など)に、子が医学部在学中で間もなく医師免許を取得できる見込みがあるような場合に、暫定的に、医師以外の者(他の理事や医療法人の運営に支障のない者)が理事長に就任できる場合がございます。もちろん、子が医師になったときはすみやかに理事長の変更をすべきことになります。
また、理事長が海外に留学するような場合に、その間、非医師である他の理事が暫定的に理事長に就任するなどの場合もございます。
社員の出資義務について
医療法には、社員の出資やその額について定められておりません。
各都道府県の指導では、安定した医療法人の経営のため、設立時に概ね1000万円の出資を求められます。
社員が3名の場合、それぞれの配分をどのようにするか、そもそも、出資しない社員がいてもよいのか、という問題がございます。
各都道府県により、その指導の内容はさまざまで、理事長が過半数を出資するのが望ましいという指導を行うところや、出資をしない社員がいてもよいとするところ、小額であっても社員の全員が出資するよう指導するところがございます。
株式会社による医療法人への拠出について
株式会社による拠出は可能ですが、社員になることはできません。
医療法人に対する出資又は寄附について
照会
1 株式会社、有限会社その他営利法人は、法律上出資持分の定めのある社団医療法人、出資持分の定めのない社団医療法人または財団医療法人のいずれに対しても出資者又は寄附者となり得ますか。
2 仮に株式会社、有限会社その他営利法人は上記1の医療法人の出資者又は寄附者となり得るとした場合、医療法人新規設立の場合と既存医療法人に対する追加出資又は追加寄附の場合の2つの場合を含むのでしょうか。
回答
標記について、平成3年1月9日付東照第3617号で照会のあったことについては、下記により回答する。
記
照会事項1については、医療法第7条第4項において「営利を目的として、病院、診療所又は助産所を開設しようとする者に対しては、都道府県知事は開設の許可を与えないことができる。」と規定されており、医療法人が開設する病院、診療所は営利を否定されている。そのため営利を目的とする商法上の会社は、医療法人に出資することにより社員となることはできないものと解する。
すなわち、出資又は寄附によって医療法人に財産を提供する行為は可能であるが、それに伴っての社員としての社員総会における議決権を取得することや役員として医療法人の経営に参画することはできないことになる。
照会事項2については、医療法人新規設立の場合と既存医療法人に対する追加出資又は追加寄附の場合も含むことになる。
(平成3年1月17日厚生省健康政策局指導課長回答より)
土地・建物を現物出資しようかと考えていますが
「医療法人の土地、建物などは法人が所有するものであることが望ましい」とされていたことから、不動産を現物出資するケースがございます。
しかし、解散するときは拠出金の範囲でのみ返還され、残余財産は全て国などに帰属します。つまり、国の財産になってしまうおそれがございます。
また、法人の事業目的が法律上制限されておりますので、再度不動産を売却するということが容易にできません。
不動産の拠出は、特段の理由がない限り避けた方が無難かと思われます。
医師が常時3名以上勤務することになったときは
医師が常時3名以上勤務する場合には、専属の薬剤師を設置しなければなりません。
医師が常時3名以上になると同時に専属の薬剤師を設置するか、3名以上になる前に専属薬剤師免除の許可を得るか、どちらかの手続きが必要です。
「常時3名」は解釈次第で微妙なところがございますので、管轄の保健所に確認するようにしましょう。
診療所の定員に変更があったときの手続き
医療法人開設の診療所の場合は、医師等の数に変更がある前に許可申請を行ない、許可を得てから医師等を雇用しなければなりません。
定員の数の数え方は、保健所等により異なりますので、医師の増員がある場合は事前に手続きを確認しましょう。
個人開設の診療所の場合は、医師の入退社時にに変更の届出を提出します。