2キロメートルを超える診療所の移転

本ページに記載の内容は、あくまで一つの見解です。必ず管轄の役所にて事前に確認しましょう。
管轄の保健所によっては、事前に開設手続きを認める自治体があるかも知れません。

診療所を移転する際の注意点としましては、その距離にあります。
保険診療を継続するためには2km以内の移転が必要です。
2kmを超えてしまいますと、移転とはみなされず新規開設ということで保険診療が1ヶ月あいてしまいます。
これは死活問題ですので、注意してください。

通常4月1日に移転する場合、次のスケジュールになります。 
3月31日 旧診療所廃止
4月1日 新診療所開設
4月1日 保険医療機関指定申請及び遡及手続き

このように保険医療機関の遡及の手続きを行う必要がございます。

遡及手続きは必ずできるというものではなく、次の要件を満たしている場合に限り、例外的に認められるものです。
例えば、個人開業から医療法人にした場合などが該当します。

下記厚生局の遡及についての記載です。
[ここから]
次の場合は、例外的に、指定期日を遡及して指定を受けることができます。
1.保険医療機関等の開設者が変更になった場合で、前の開設者の変更と同時に引き続いて開設され、患者が引き続き診療を受けている場合。
2.保険医療機関等の開設者が「個人」から「法人組織」に、又は「法人組織」から「個人」に変更になった場合で、患者が引き続き診療を受けている場合。
3.保険医療機関が「病院」から「診療所」に、又は「診療所」から「病院」に組織変更になった場合で、患者が引き続き診療を受けている場合。
4.保険医療機関等が至近の距離に移転し同日付で新旧医療機関等を開設、廃止した場合で、患者が引き続き診療を受けている場合。

(注)開設者変更の場合は、開設者死亡、病気等のため血族その他の者が引き続いて開設者となる場合、経営譲渡又は合併により、引き続いて開設者となる場合などを含みます。

(注)至近の距離の移転として認める場合は、当該保険医療機関等の移転先がこれまで受診していた患者の徒歩による日常生活圏域の範囲内にあるような場合で、いわゆる患者が引き続き診療を受けることが通常想定されるような場合とし、移転先が2㎞以内の場合が原則となります。
[ここまで]

この、遡及の要件は厳格ですので、拡大解釈は一切認めてもらえないと考えていただいた方がよいです。
あくまで例外的措置であるということです。

ここで問題なのが、一番最後に記載のある注意書きです。
保険医療機関の移転は2km以内が原則となっておりますが、原則に対する例外とは、過疎地において2kmを超えるような場合でも患者の診療圏が変わらないような場合をいうため、通常は2kmを100mでも超えると認められないと考えてください。
基本的に、2kmを超える場合は一切の交渉の余地はありません。

診療所を移転する場合は、この2kmを絶対条件として考えましょう。
稀に、例外の例外として2kmを数百メートル超えた場合でも認めてもらえた例があるようですが、相当な労力を要します。また、圧倒的に認められない例がほとんどですので、これに期待するのはやめておいた方がよいです。

当事務所でも、このご相談は過去にございますが全くダメでした。
一例を言いますと、3km離れた場所への移転について、一旦は厚生局から承諾を得たにも関わらず、後日、それを覆して一貫して認めないとした例がございます。

なぜ2kmかというと、2km変われば患者の診療圏が変わるという理由です。
厚生局のHPにもございますが、どの項目も「患者が引き続き診療を受けている」となっております。これは旧診療所から新診療所に変わっても同じ患者が引き続き診療を受けているという趣旨です。
患者が引き続き診療を受けることができる移転の距離が2kmという見解です。そのため、2kmを超える移転は「移転」ではなく新規開設だという捉え方です。

なお、補足の注意点がございます。
同じ患者が引き続き診療を受けていることが前提となっているため、2km以内であっても診療科目が全く異なるような場合は、遡及が認められない場合が考えられますので、事前に確認が必要です。


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